大豆タンパク質の効果

○大豆たんぱく質のメリット  

冠状動脈疾患のリスク低減と体脂肪の減少

米国食品医薬品庁(FDA)では、大豆タンパク質が冠状動脈疾患のリスクを減らすということで、1999年に健康強調表示(Health Claim)を認めています。   また肥満マウスを対象に大豆タンパク質あるいはカゼインを与えたところ、大豆タンパク質群のほうが体脂肪の減少が大きくなっています。  

動脈硬化の予防・インスリン抵抗性の改善と抗酸化作用が高い

大豆タンパクを与えたマウスはカゼイン群に比べて血中アディポネクチンが増加していました。
アディポネクチンは脂肪細胞から分泌される生理活性物質の一つで、AMPKを活性化して体脂肪を燃焼させたり、傷ついた血管壁を修復して動脈硬化を予防したり、インスリン抵抗性を改善して糖尿病を予防したりなどの善玉作用を発揮してくれる物質です。  

また9週間に渡ってホエイプロテインバーと大豆プロテインバーを比較したところ、ホエイのほうが少しだけ筋肥大効果は高かったものの、運動後の抗酸化ステータスは大豆タンパク質のほうが高かったという報告もあります。

特に多いのが大豆プロテインによって骨が強くなったという報告です。女性ホルモンは骨芽細胞を刺激しますが、大豆イソフラボンにもこの作用があるようで、大豆タンパクを摂取することによって骨芽細胞が活性化されたという報告が数多くあります。 

○大豆たんぱく質のデメリット  

プロテインスコアが高くない プロテインスコア56

デメリットもあります。プロテインスコアの項で書いた通り、大豆はメチオニンが少なく、プロテインスコアは僅かに56です。そのため、殆どの大豆プロテインはメチオニンを添加してプロテインスコアが100になるように高めています。

女性ホルモンに似た作用を持つ

  また大豆タンパク質に含まれるイソフラボンは、女性ホルモンに似た作用を持ちます。この女性化作用が問題になると考える人も少なくはありません。

ゴイドロゲンとフィチン酸が悪影響

そして大豆には「ゴイトロゲン」という甲状腺機能に影響を与える物質があり、甲状腺腫を誘発する可能性があるという人もいます。さらに大豆にはフィチン酸が含まれ、ミネラルの吸収を阻害するという問題もあります。

一日に大豆イソフラボン(アグリコン)としてトータル75mgまでなら問題なし。サプリメントとして食事に追加して摂取する場合は、一日に30mgまでなら大丈夫ということです。   ある資料によればSPCの大豆プロテインに含まれるイソフラボンは水で処理した場合、100g中102mgです。対してアルコールで処理した場合は100g中12mgに過ぎません。

  SPIの場合はさらに少なくなるようです。ただしメーカーによってはSPIであってもイソフラボンが多く含まれるような製造方法にしているところもあります。(ピューリタンプライドなど)   心配でしたら大豆プロテインを飲む場合、どちらの処理がされているか、またどれくらいのイソフラボンが含まれているか、メーカーに問い合わせてみると良いでしょう。  

・ゴイトロゲンについて  

これはヨウ素(ヨード)の取り込みを阻害して甲状腺の肥大を起こすものの総称で、非常に多くの種類がありますが、大豆にもこれが含まれます。   しかしヨウ素は海水中に多く存在し、昆布やワカメ、ヒジキなどに大量に含まれます。

日本人はむしろヨウ素の摂取量が過剰なため、ゴイトロゲンが問題になることはないと思ってよいでしょう。もちろん甲状腺に問題がある人は話が別です。

・フィチン酸について  

フィチン酸はリンの貯蔵形態であり、キレート作用が強いため多くのミネラルと結合し、体外に排出する作用があります。フィチン酸により大豆プロテインが鉄の吸収を妨げるという報告は、確かにあります。  しかし、大豆プロテインだけでなく多くの食物に広範に含まれます。   provided by Ramiel Nagel   オートミールやパン、トウモロコシなどに含まれる量を考えると、それほど大豆プロテインからの摂取を気にしなくても良いようにも思えます。  

むしろ中年以降の男性の場合、体内の「鉄」が多くなると心臓血管系疾患のリスクが高くなることや、肉や魚、卵には大量の鉄が含まれることから、これらを多く食べる人は逆に大豆プロテインを摂取してフィチン酸を採り入れることが、心臓血管系リスクの低下にも結び付くのではないかという推論もなりたちます。  

豆乳でプロテインを割ることは避けた方がいいかも

大豆には問題があります。それは「トリプシンインヒビター」です。トリプシンはタンパク消化酵素、インヒビターというのは邪魔するという意味で、大豆にはタンパク消化酵素を邪魔する物質が含まれているのです。  

植物にはこのように「動物に食べられてしまわないように」代謝を阻害する物質が含まれていて、ジャガイモの芽にあるソラニンやホウレンソウに含まれるシュウ酸などが代表的なものです。人参に含まれるアスコルビナーゼはビタミンCを壊し、ワラビやゼンマイなどの山菜類にはビタミンB1を  壊すアノイリナーゼが含まれます。  

大豆のトリプシンインヒビターもその一つで、多くの動物は生の大豆を食べると下痢してしまいます。   ただしこれは加熱で壊されます。大豆タンパク質を製造するときには加熱されますので大丈夫です。

なお大豆製品のトリプシンインヒビター残存率は、木綿豆腐で2.5%、絹ごし豆腐で4.3%、豆乳で13%、納豆で0.7%だそうです。 豆乳でプロテインを割る人もいますが、これは避けたほうが良いかもしれません。

また「きな粉」はタンパク含有量が多いということでプロテインの代わりにきな粉を、と考える人がたまにいますが、これも避けたほうがいいでしょう。  

卵は生の場合吸収は阻害される

卵にもトリプシンインヒビターとしてタンパク分解酵素を阻害する物質(オボムコイド)が含まれます。日本の栄養学の開祖、小柳達男氏の実験によれば、生の卵白を3個食べたとしても、1.3個分は吸収されずに排泄されてしまうとのことです。  

加熱すればオボムコイドは破壊されるので大丈夫ですが、生卵は他にもアビジンやサルモネラ、アレルゲンなどの問題が含まれるため、食べるときは加熱するようにしたいものです。  

なおホエイにアルギニンが少なく、大豆にアルギニンが多いということで、この二つのプロテインをミックスするという方法も悪くありません。消化吸収速度が問題にならない就寝前などは、この二つを混ぜて飲むのもいいでしょう。  

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