高栄養状態はあまり意味がない?!

ボディビルダーの世界では、「1日2.5~3時間毎、6回以上に分割して食べることが、筋量アップ成功の秘訣」だと数十年来に亘って云われてきました。

タンパク質の消化率

タンパク質の分解は、先ず口の中で“噛む”という力学的行為から始まり、次いで胃内で塩酸と酵素ペプシノゲンによって分解・消化されます。小腸で食物の消化・吸収はほとんど行われます。小腸でペプシン・トリプシン・キモトリプシンなどの酵素によって、タンパク質から小さなアミノ酸に分解・消化され、小腸壁を通して吸収され、静脈血管に送られて肝臓に輸送されます。肝臓ではアミノ酸の代謝や血中アミノ酸レベルの恒常性維持のための調節が行われます。
因みに、大腸は小腸より直径が大きく、長さ約1.5mの管で、水分はここで吸収され、固形の老廃物が排出されます。 

下表は食品タンパク質の消化率を表しています。加熱具合でも消化率は変わってきますが、植物性タンパク質より動物性タンパク質の消化率が高いことが判ります。

食品消化率
97%
ミルク&チーズ97%
ピーナッツ&バター95%
食肉&魚肉94%
オートミール&全粒粉86%
大豆78%
76%

ホエイ vs カセイン

プロテインサプリメントの吸収率(スピード)

プロテイン吸収率
時間あたりg数
ソイ3.9
カゼイン6.1
ホエイ8.1
プロテインアミノ酸レベルベースラインに戻るまで
カゼイン低レベルでの上昇約7時間
ホエイ急上昇約4時間

ホエイは、摂取1時間後に血中アミノ酸レベルを急上昇させますが、約4時間後にはベースラインに戻ります。逆に、カセインは、アミノ酸の血中濃度は低レベルの上昇ではあるが長時間持続し、ベースラインに戻るのは約7時間後となることが研究で判っています。

血中アミノ酸合成分解
増加増加低減
減少低減増加

血中アミノ酸が増加するとタンパク質の同化(合成:アナボリズム)が高まり、異化(分解:カタボリズム)が低減します。
従って、ホエイはアナボリックプロテイン、カセインはアンチカタボリックプロテインとも称されます。

骨格筋の代謝(メタボリズム)
筋肉内では、タンパク質に関して2つの正反対のプロセスが発生しています。
そのプロセスとは合成(同化)と分解(異化)で、このプロセスを常に繰り返すことを代謝回転(ターンオーバー)と呼びます。筋肉量がどうなるかはこの2つのバランスによって決まります。
・タンパク質合成 > タンパク質分解 = 筋肉量の増加
・タンパク質合成 = タンパク質分解 = 筋肉量は変化なし
・タンパク質合成 < タンパク質分解 = 筋肉量の減少

代謝回転の速度は、ゆっくり順に並べると基本的に肝臓→筋肉→臓器や腱や靭帯になりますが、栄養素、トレーニング、薬、消化スピードに影響されます。

高栄養状態はあまり意味がない?!

筋量アップは絶えず十分な栄養素を摂り続けること、これは正しい考え方ではありません。
アミノ酸を点滴すると、筋肉のタンパク同化が促進しなくなってしまうということが、幾つかの研究で判っています。


標準レベルを超える70%までアミノ酸を点滴した実験研究があります:

タンパク合成は約30分後に増加し、
2時間持続したものの、
元のレベルまで減少してしまった。

血中アミノ酸が高レベルに維持されたにも拘わらず、ベースラインまで減少したと云うことは見落とせないポイントです。加えて、尿量が増えたことから、余剰のアミノ酸が単に肝臓で異化し、代謝の老廃物として尿となって排泄されたもので、筋肉で使われたものではなかったことを物語っています。

食事と点滴との違い

点滴投与食事から摂取
必須アミノ酸100%食品たんぱく質の40〜50%
血中に分泌される量100%50%

点滴と経口摂取では大きな違いがあります。つまり、殆どの食品タンパク質の必須アミノ酸の含有量は約40~50%で、消化され血中に分泌されるのはその内の半分弱です。

必須アミノ酸10gで最大化、20g以上で昂進なし(若い被験者)

被験者に必須アミノ酸0~20グラム投与し、筋タンパク合成を調べた研究があります。
若い被験者では、
10グラムの必須アミノ酸→筋タンパク合成は最大化
20グラム以上は昂進なかった

この時の10グラムの必須アミノ酸は、食品ベースのタンパク質20~25グラムに相当します。

ホエイの特徴として、ホエイはタンパク合成を最大限に高めるけれども、その時点で使われていなかったアミノ酸は、肝臓で代謝され廃棄処理(バーンオフ)されることです。
逆に、ホエイを少量ずつ6時間以上に亘ってチビチビ摂取すると、カセインの特徴を真似るように、アミノ酸の酸化は高まらず、タンパク合成も昂進しません。

スロープロテインと言われるカセインはオーバーロードに至らず、ホエイよりも高水準のロイシンを産生し、全体としてベターな結果を示しました。

食事の間隔を最低3時間空けることが望ましい

本質的にアミノ酸を余りにも頻繁に摂取すると、体のアミノ酸の利用度が減少するようです。
「時間単位の小刻みな食事グループ」と「三回グループ」の二つに分けて、ロイシンの消費の状態を比較しました。三回グループはタンパク酸化が16%減少しました。

間隔を空けて食事すると、血中アミノ酸レベルが先ず高まり(アミノ酸利用度がオーバーロードにならず、タンパク合成を高める)、次に一定の時間経過とともに減少する(そうすることで、筋肉が再びアミノ酸に対して感受性を持つ)ことが理想的と言えます。
つまり、余りに頻繁に食べ過ぎるのも利点が無く、食事の間隔を最低3時間空けることが望ましい。

食事による筋肉の合成状態の継続
普通量の場合は、アナボリックの状態は5~6時間継続する。
色々な食品の組合せて食べた場合は、5時間経過した時点でも栄養素が血中に分泌される。
スローと言われるカセインの場合では、食べてから7~8時間は血中にアミノ酸が分泌される。
これらを考慮して、食後のアナボリック状態の継続は、保守的にみて5時間と考えるのが妥当でしょう。

「運動前、運動中、及び運動後の栄養摂取」のことを、「Around Workout Nutrition」と言い、低強度の有酸素運動では必要ではありませんが、激しい高強度の運動やアスリートには欠かせぬものです。最近この方式が流行っています。
例えば、一日にプロテインを200g摂る人がいるとする、トレーニングの際に40g摂り、残りを4回均等(40g)に、あるいは6回均等(27g)に摂るといった方法です。

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