人工甘味料は危険なのか?

結論:使い方による。

甘味を求めて砂糖や果糖を大量に摂取するよりは、人工甘味料を少量だけ使って消費カロリーに気をつけるようにしたほうが、リスクを減らすことができると思われる。

人工甘味料の刺激によってインスリンが分泌

実は膵臓には甘みを感じるレセプターが存在し、人工甘味料の刺激によってインスリンが分泌されます。(※2)インスリンが分泌されれば、当然血糖値は低下します。普通の食事でもインスリンは分泌されますが、食事で糖質を摂取しているわけですから、血糖値は回復します。だから食後にそれほど空腹感は起こりません。しかし人工甘味料の場合は糖質を摂取していないため、血糖値は低下したままになる。そのため空腹感が強まり、結局食べる量が増えてしまう。

「食品においてゼロリスクは存在しない」という現実

まず考えるべきなのは、リスクベネフィット。つまり危険性とメリットを天秤にかけるということ。ここで前提となるのは、「食品においてゼロリスクは存在しない」という現実です。水であれ酸素であれ、量が多ければ安全ではなくなります。水中毒や活性酸素の害については言うまでもないでしょう。白米の食べ過ぎが良くないのは、もはや常識です。ヒトは甘味を欲します。

古来、サトウキビや甜菜から抽出した砂糖は大変な貴重品でした。しかし砂糖や果糖の問題点についても、既に読者はご存知のはずです。つまりここでのポイントは、砂糖や果糖と比べての人工甘味料の危険性だということになります。最初から甘味が必要ないという人なら、人工甘味料の危険性は問題になりませんので。さて、まずは人工甘味料と天然甘味料の違いからいきましょう。

天然甘味料の代表は、砂糖やハチミツ、メープルシロップです。これらは天然のものから抽出されてつくられます。なおステビアや甘草も天然甘味料に分類されます。

いっぽうで人為的に合成した甘い物質を人工甘味料と呼びます。サッカリンやアスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロースが代表的な人工甘味料。

ややこしいのが糖アルコールです。エリスリトールやキシリトール、ソルビトール、マンニトールなどは天然に存在します。しかしマルチトールやラクチトールなどは天然には存在しません。これは天然なのか人工なのか、判断に迷うところ。

別の分類方法もあって、「糖質系甘味料」と「非糖質系甘味料」に分け、糖質系甘味料の方に砂糖やブドウ糖、果糖、オリゴ糖、糖アルコールを入れ、非糖質系甘味料の方にステビアや甘草などの天然甘味料、サッカリンなどの人工甘味料を入れるという考え方もある。

食事量が増えなかった場合

砂糖が多く含まれる清涼飲料水を10週間に渡って飲ませたところ、体重と体脂肪率、血圧が上昇した。しかし人工甘味料を使った群は、そうならなかったという結果。(※3)

この研究では人工甘味料群の摂取カロリーが明らかに少なくなっており、タンパク質や脂質の摂取量は大きく違わなかったことから、「食事量さえ増えなければ、人工甘味料群のほうがダイエットには有効」

「うつ」のリスク31%~51%増加

50歳から70歳の約26万人を対象にした研究で、ダイエットソーダを飲むと、「うつ」のリスクが31%増加し、またダイエットフルーツポンチでは、なんと51%のリスクが増加。(※4)

普通の砂糖が使われたソーダでは、22%のリスク増加。普通の砂糖が使われたフルーツポンチだと8%のリスク増加。

特にアスパルテームが多いとリスクが増加しやすい(36%)。

低血糖と過剰摂取が問題

これは人工甘味料単独の作用と考えるより、人工甘味料使用による「低血糖」と、それに引き続く糖質の過剰摂取が問題だと考えるほうがしっくりきそう。

2016年の報告では、週5回くらいまでだったら心臓血管系疾患への影響は見られなかったとしています。(※5)

また砂糖で甘くした清涼飲料水は糖尿病のリスクを高めたが、人工甘味料で甘くした清涼飲料水のほうはリスクとの関連がそれほどみられなかったという報告もあります。(※6)

以上より、甘味を求めて砂糖や果糖を大量に摂取するよりは、人工甘味料を少量だけ使って消費カロリーに気をつけるようにしたほうが、リスクを減らすことができると思われます。

※1:
Sucrose compared with artificial sweeteners: different effects on ad libitum food intake and body weight after 10 wk of supplementation in overweight subjects.
Am J Clin Nutr. 2002 Oct;76(4):721-9.

※2:
Sweet taste receptor expressed in pancreatic beta-cells activates the calcium and cyclic AMP signaling systems and stimulates insulin secretion.
PLoS One. 2009;4(4):e5106. doi: 10.1371/journal.pone.0005106. Epub 2009 Apr 8.

※3:
Consumption of sugar sweetened beverages, artificially sweetened beverages, and fruit juice and incidence of type 2 diabetes: systematic review, meta-analysis, and estimation of population attributable fraction
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h3576 (Published 21 July 2015)

※4:
Sweetened Beverages, Coffee, and Tea and Depression Risk among Older US Adults
PloS One 2014; 9(4): e94715. Published online 2014 Apr 17.

※5:
Frequent Consumption of Sugar- and Artificially Sweetened Beverages and Natural and Bottled Fruit Juices Is Associated with an Increased Risk of Metabolic Syndrome in a Mediterranean Population at High Cardiovascular Disease Risk.
J Nutr. 2016 Aug;146(8):1528-36. doi: 10.3945/jn.116.230367. Epub 2016 Jun 29.

※6:
Association between sugar-sweetened and artificially sweetened soft drinks and type 2 diabetes: systematic review and dose-response meta-analysis of prospective studies.
Br J Nutr. 2014 Sep 14;112(5):725-34. doi: 10.1017/S0007114514001329. Epub 2014 Jun 16.

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